「啓蟄(けいちつ)」ってご存知ですか?

春になって冬眠していた虫が出てくるという日ですけど、どうして虫は外が暖かくなったとわかるんでしょう?
だって土の中ですよね。土の中はまだ冷たいような気がするし。
それから出て来たのはいいけど、春は三寒四温というくらいですから、寒波が戻ったらどうするんでしょう。
それにそもそもどんな虫が出てくると「啓蟄」になるんでしょうか。いろいろ疑問があります。
そこで今回は「啓蟄」についていろいろ調べてみることにしました。
どうぞ最後までお付き合いください。
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目次
啓蟄とは?
啓蟄とは二十四節気の第3のことを指し、二月節(旧暦1月後半から2月前半)の頃になります。
「啓」は「開く」、「蟄」は「虫などが土中に隠れ閉じこもる」という意味で「啓蟄」で「冬籠りの虫が這い出る」という意味になります。
また春の季語でもあります。
現在広まっている定気法では太陽黄経が345度のときで3月6日頃になります。
暦ではそれが起こる日の事を指しますが、天文学ではその瞬間と規定しています。
平気法では冬至から5/24年(約76.09日)後で3月8日頃になります。
期間としての意味もあり、この日から次の節気の春分前日までの事を言います。
啓て何のこと?蟄て何のこと?
「啓蟄」の語源は、蟄虫啓戸 (地中にひそんでいた虫が戸を啓いて地上にはい出るという意味) に由来し、「啓」には「ひらく、開放する、(夜が)明ける」などの意味があり、「蟄」には「冬ごもりのために虫が土の下に隠れる、とじこもる」という意味があります。
あわせて「冬籠りの虫が這い出る」という意味になり、「啓蟄」という言葉になるわけです。
2019年はいつ?
2019年の啓蟄は暦の上では3月6日で、天文学的には世界時で3月5日21:10となります。
日本時間ではこの9時間後になるので翌日となるわけです。
毎年3月5日か3月6日のどちらかが啓蟄になります。
どうして外に出るころだと虫はわかるの?
虫は土の中でも気温の変化を感知出来るんです。
また冬眠するからといって必ずしも土の中に潜ることはないんです。
例えばクワガタムシは木の皮の裏やうろの中で冬眠しますし、テントウムシは十数匹という集団で木の葉の裏などで冬眠します。
ですから日光の強さや気温の変化がわかるわけです。
どんな種類の虫がでてくるの?
現在では「虫」といえば昆虫やクモのような節足動物のことを指しますが、昔は生き物全般を「蟲(ちゅう)」と言っていました。「虫」は略字なんです。
そして中国で「啓蟄」の季節が定められたのは紀元前のことですから、ヘビやカエルはもちろん、クマやリスまで「蟲」だったんです。
ですから「啓蟄」で出てくる「蟲」には爬虫類や両生類、哺乳類も含まれていたんです。
もっとも今では「蟲」は「虫」に変化したので、ヘビ類よりも小さな生き物を指す言葉となっています。
今の感覚で「啓蟄」を捉えるならヘビやカエル、そして昆虫類ということになるでしょう。
冬の間は虫も冬眠しているの?
昆虫の多くは冬眠しますが冬眠しない、あるいは完全には冬眠状態には入らない昆虫もいます。
冬眠をしない昆虫には例えば「キチョウ」という小型の蝶がいます。
成虫のまま越冬するので冬でも暖かい日にはひらひら舞うことがあります。
完全には冬眠状態に入らない昆虫の代表は「テントウムシ」が挙げられます。

暖かい日には出て来て日向ぼっこをしています。
また逆に冬に活動する昆虫もいます。それはフユシャクという蛾の仲間です。
フユシャクのオスには羽根がありますが、メスにはないものが多く、フェロモンを出しながら移動してオスの飛来を待ちます。
他の虫が活動できない5度前後の気温でも飛ぶことが出来ます。
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啓蟄の後寒くなったら出てきた虫はどうなるの?
昆虫は割と丈夫なので活動を停止するくらいで済むかも知れません。
特に成虫で越冬する昆虫は問題ないでしょう。
ですが悲惨なのはヘビやカエルといったいわゆる変温動物です。彼らは暖かくないと活動が出来ません。
それゆえ冬眠するわけですが、出て来てまた寒くなると新陳代謝が停止してしまいます。
これは動けなくなるのと同時に食物の消化も止まってしまうんです。
そうなると食物が腐敗してしまうので死んでしまいます。
実際、急に暖かくなったあとに真冬の寒さに戻ってしまった年には、多くの爬虫類や両生類が死んでいます。
啓蟄の反対の言葉はある?
啓蟄が虫が這い出る日なら反対に虫がこもる日というのはあるんでしょうか。
じつはあるんです。それは「『蟄虫杯戸(むしかくれてとをふさぐ)』候」。
「候」とは二十四節気をさらに細かく分けた季節の区分です。
季節は仲秋で二十四節気の秋分の次候にあたりますから9月28日~10月2日頃に相当します。
実際に寒い地方ではこの時期から虫は冬眠に入り始めます。
虫に関するほかの言葉もみてみよう。
虫に関する慣用句は数多くあります。少なくても50くらいはあるんじゃないでしょうか。
よく使う慣用句をいくつか挙げておきますね。
虫がいい 虫の知らせ 虫が好かない 虫がつく 虫酸が走る 虫の息 虫の居所が悪い 虫も殺さない 蓼食う虫も好き好き 飛んで火に入る夏の虫 塞ぎの虫 獅子身中の虫 腹の虫がおさまらない 虻蜂取らず 蜘蛛の子を散らすよう 蚊の鳴くような声 蟷螂の斧
みなさんも一度は使ったことがあるんじゃないでしょうか。
虫出しの雷
「虫出しの雷」とは立春のあと初めて鳴る雷のことです。春の季語となっています。
立春は2月4日頃ですから3月6日頃の啓蟄に鳴ることが多いんです。
そのため冬眠中の虫が驚いて出て来る雷として「虫出しの雷」と呼ばれるようになりました。
この「春雷」が鳴るとだんだん暖かくなっていきます。
菰外し(こもはずし)
冬の間、松の木などに巻いていた菰(こも)を外して焼く行事のことを「菰外し(こもはずし)」と呼びます。

江戸時代頃から大名庭園などで行われてきた害虫の駆除方法ですが近年では行われなくなりました。
皇居外苑や京都御苑ではもう20年以上前に廃止されています。
以前は松の木の大敵であるマツカレハの幼虫を菰の中で越冬させ、焼いてしまうことで駆除になると考えられていました。
ですがマツカレハよりも、マツカレハの天敵であるクモやヤニサシガメの方が多く越冬していることがわかったため、廃止されたんです。
つまり今まで味方を焼き殺していたわけです…。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
「啓蟄」についておわかりいただけたと思います。
それにしても古代中国では生き物全般のことを「蟲」と呼んでいたんですね。知りませんでした。
さて。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また次回お会いしましょう。
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