古語辞典を見ると「紅葉」とは「もみつ・もみづ」と言う自動詞が語源で、意味は「秋の終わりに草木の葉が雨や霜のために赤または黄色になる」ことを指します。

万葉集には「狩る」と言う意味が獣を狩るだけでなく植物採集の意味、つまり、キノコ狩りやたけのこ狩りなどで使用されています。
でも「紅葉狩り」は紅葉を鑑賞することですよねえ?キノコやたけのこのように取ってきて食べるわけではありません。
なのになぜ「狩り」なんでしょう。
今回はなぜ「狩」という字を使うようになったのか、その由来を見ていきたいと思います。
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目次
なぜ紅葉を鑑賞するのに「狩」なのか?
季節の花や草木を山野に探す様子を、同じように獣や鳥を山野に探し「狩る」姿になぞらえて、「◯◯狩り」とする言い方が古くからあったんです。
「紅葉狩り」もそのひとつなんですね。
ちなみに「紅葉狩り」には「紅葉見(もみじみ)」や「観楓(かんぷう)」という言い方もあります。
また「桜前線」と同じように「紅葉前線」もあります。
「紅葉前線」は「桜前線」とは逆の動きをします。すなわち、北から南へ移動し、山頂から麓へと下るんです。
さらに正確に言えば、「紅葉」は葉が赤くなることを指し、イチョウなどのように黄色く変わる場合は「黄葉」といいます。
「狩」の本来の意味は?「狩」を使う言葉は?
「狩」の本来の意味は山野で鳥獣を追いかけ捕らえることです。「猟(りょう)」、「狩猟」ともいいます。
これが転じて海で魚介類を取ることを「潮干狩り」といい、山野で花や草木を鑑賞・採取することを「紅葉狩り」「きのこ狩り」「たけのこ狩り」などといいます。
ホタルを愛でる「蛍狩り」も含まれるでしょう。
また人を追い立てて捕らえることを「山狩り」や「魔女狩り」ということもあります。
他には果樹園などで開催される「ぶどう狩り」や「いちご狩り」なども意味としては同じです。
いつから紅葉狩りが行われているのか。
「紅葉(こうよう)」という言葉は平安時代の頃から使われるようになります。
平安貴族は藤や桜など様々な花を庭に植え、愛でますが紅葉(もみじ)はあまり登場しません。
「源氏物語」のなかで、光源氏が建てた六条院には紅葉が植えられていたという記述がありますが、それはあくまでも物語の中でのこと。実際には、渓谷沿いに自生している紅葉をわざわざ見に行かねばならず、あまり関心がなかったようです。
安土桃山時代に入ると時の天下人である豊臣秀吉が、醍醐の花見をした年の秋に醍醐の紅葉狩りを開こうとしますが、その前に亡くなってしまいます。
紅葉狩りが人気の行楽となるのは江戸時代の中期、町民文化が華やかになる頃です。
お伊勢参りが流行り旅行がブームとなります。
名所案内本が多く出版されるようになると、その中に載っている紅葉の名所に人々が押し寄せるようになります。そして花見と同様、紅葉の下に弁当や酒を持ち込んでどんちゃん騒ぎをするようになります。
第八代将軍の徳川吉宗は現在の東京都北区にある飛鳥山公園に桜や楓を植樹しています。春には花見を秋には紅葉狩りを楽しめるわけですね。
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「狩」が使われるようになった理由その1・貴族説
平安時代の貴族たちは血で汚れることを嫌い狩りをしなくなります。そのかわり庭に草木を植え花を愛でたんです。ところがなぜか紅葉は植えられませんでした。紅葉を見に行くには山や渓谷沿いまで出かけなければなりません。
狩りと同様に山に分け入ることから、貴族たちは紅葉を見に行くことを「紅葉狩り」と称するようになったという説です。
「狩」が使われるようになった理由その2:草花(紅葉)を刈り、手に取り観賞した説
「紅葉狩り」は紅葉を見に行くことを指しますが、枝を手折ったり紅い落葉を持ち帰ることもありました。
狩りで得た獲物を持ち帰ることになぞらえて、「狩」という字を使うようになったという説です。
「狩」が使われるようになった理由その3:薬草目的で採集した説
紅葉は木だけに現れる現象ではありません。草にも紅葉するものがあるんですよ。これを「草もみじ」といいます。
草もみじには草餅にするヨモギや、薬草として使われるドクダミやゲンノショウコなどがあります。
これらの薬草を採集し持ち帰ることから、「狩」という字が当てられるようになったという説です。
まとめ
・季節の花や草木を山野に探す様子を、同じように獣や鳥を山野に探し「狩る」姿になぞらえて、「◯◯狩り」とする言い方が古くからあった。紅葉狩りもそのひとつ。
・「紅葉狩り」には「紅葉見(もみじみ)」や「観楓(かんぷう)」という言い方もある。
・「狩」の本来の意味は山野で鳥獣を追いかけ捕らえること。「猟(りょう)」、「狩猟」ともいう。
・「狩」を使う言葉には「潮干狩り」「紅葉狩り」「きのこ狩り」「たけのこ狩り」「蛍狩り」「山狩り」「魔女狩り」「ぶどう狩り」「いちご狩り」などがある。
・紅葉狩りは平安時代から行われているが、盛んになったのは江戸中期から。旅行がブームとなり名所案内本に掲載された紅葉の名所に人が押し寄せるようになる。八代将軍吉宗は桜と紅葉を植樹し、町民は春には花見を秋には紅葉狩りを楽しんだ。
・「狩」が使われるようになった理由については諸説ある。
狩りと同様に山に分け入ることから、貴族たちは紅葉を見に行くことを「紅葉狩り」と称するようになったという貴族説。
枝を手折ったり落ち葉を持ち帰ることを、狩りで得た獲物を持ち帰ることになぞらえ「狩」が使われるようになったという説。
草の紅葉である「草もみじ」にはドクダミやゲンノショウコといった薬草がある。これらの薬草を採集することから「狩」という字が使われるようになったする説など。
いかがでしょうか。紅葉の季節になったらぜひ、行楽に出かけましょう。
軽くハイキングをしてお腹が空いたら「もみじ鍋(鹿肉)」をつつくのもいいかも知れません。
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